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自治体における介護予防・認知症予防の実装に関する2編の論文が掲載されました

愛知医科大学医学部衛生学講座の黒田佑次郎准教授、鈴木孝太教授らの研究グループによる2編の論文が、2026年6月に国際学術誌に掲載されました。

いずれも、全国の市区町村を対象とした調査をもとに、地域における介護予防・認知症予防の取り組みを「どのように実施し、社会に広げていくか」という観点から検討した研究です。

1.コロナ禍における介護予防事業の実施と要介護認定率の推移
1編目の論文は、全国の市区町村を対象として、COVID-19流行下における地域介護予防事業の実施状況と、その後の要介護認定率の推移との関連を検討したものです。
COVID-19の流行により、高齢者が地域で参加する体操教室や交流活動など、多くの介護予防事業が中止・縮小されました。本研究では、2020年度に予定されていた身体活動、社会参加、認知機能、栄養、健診に関する事業の実施状況と、2018~2023年度の要介護認定率を全国規模で分析しました。

その結果、身体活動プログラムおよび認知機能に関するプログラムを予定どおり実施できた自治体では、十分に実施できなかった自治体と比べて、コロナ禍における要介護認定率の上昇が小さい傾向が認められました。分析対象となった1,114自治体のうち、2020年度に身体活動プログラムを十分に実施できた自治体は15.6%、認知機能プログラムでは14.2%でした。

本研究は自治体単位のデータを用いた観察研究であり、事業の実施が要介護認定率の上昇を直接抑えたと断定することはできません。しかし、感染症流行時においても、地域の介護予防活動を可能な形で継続することの重要性を示唆する結果です。

論文情報
Kuroda Y, Orui M, Shindo Y, et al.
Municipal implementation of community-based preventive programs during the COVID-19 pandemic and long-term care certification trends in Japan: a nationwide ecological analysis.
BMC Health Services Research. Published June 6, 2026.

https://link.springer.com/article/10.1186/s12913-026-14909-0

2.自治体による多領域認知症予防プログラムの導入を促す要因
2編目の論文では、全国1,741市区町村を対象に調査を行い、認知症予防の取り組みの現状と、複数の生活習慣を組み合わせた「多領域認知症予防プログラム」の導入意向に関連する要因を検討しました。

多領域認知症予防プログラムとは、運動、栄養、認知活動、社会参加、生活習慣病の管理など、複数の認知症リスク要因に同時に働きかける取り組みです。近年、その有効性を示す研究成果が蓄積されていますが、自治体の事業としてどの程度導入されているかは十分に明らかになっていませんでした。

941自治体から得られた回答を分析した結果、現在の自治体の取り組みは、認知活動、社会参加、身体活動を中心としており、循環器疾患のリスク管理に関する取り組みは相対的に少ないことが分かりました。

また、多領域認知症予防プログラムの導入に前向きな自治体には、次のような特徴が認められました。
• 住民のヘルスリテラシー向上に取り組んでいる
• 過去に多領域型の事業を実施した経験がある
• 世界保健機関(WHO)の認知症リスク低減ガイドラインを認知している
• すでに多くの認知症予防項目に取り組んでいる
特に、住民のヘルスリテラシー向上に取り組んでいることが、導入意向と最も強く関連していました。一方で、職員数などの組織規模を示す要因には明確な関連が認められませんでした。

これらの結果から、科学的根拠に基づく認知症予防を地域に普及するためには、単に人員や予算を確保するだけでなく、既存事業を通じて経験を蓄積すること、ガイドラインなどの知識を共有すること、住民が健康情報を理解し活用できる環境を整えることが重要であると考えられます。

論文情報
Kuroda Y, Goto A, Shindo Y, et al.
Programmatic readiness and health literacy predict the adoption of multidomain dementia prevention: a nationwide survey of Japanese municipalities.
BMC Public Health. Published June 5, 2026.

https://link.springer.com/article/10.1186/s12889-026-28068-8

今後の展望
今回の2編の研究は、地域の健康づくりにおいて、効果的なプログラムを開発するだけでなく、自治体や地域の現場で実際に導入し、継続できる仕組みを検討することの重要性を示しています。
本講座では今後も、自治体や地域の関係者と連携しながら、介護予防・認知症予防をはじめとする科学的知見を、実際の地域保健活動へつなげるための研究に取り組んでいきます。